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そんなことを思いながら歩いていると、不意に足に痛みが走った。……まさか。そう思い痛む足を引きずり会場の端による。
そのままこっそりと靴を脱げば……痛々しい傷が足に出来ている。
(やっぱり、靴擦れしたんだわ)
レースの靴下には血が染みついており、相当深い靴擦れだとわかる。これは、洗っても取れないだろうなぁ。何処となく庶民的な考えを思い浮かべながら、マーガレットはこっそりと「はぁ」と息を吐く。
これでは婚活どころの騒ぎではない。そう思いマーガレットはもう一度靴を履く。そうすれば、やはりひどい痛みに顔をしかめてしまった。
……あぁ、最悪だ。
(これではもう歩くのは無理だわ。……舞踏会が終わるまで、外で待機していましょう)
舞踏会というだけはあり、ここは踊る場所である。だからこそ、ここにいることは憚られた。誘われはしないだろうが、ダンスに誘われれば踊らざる終えない。が、この靴擦れでは踊ることなど出来そうになかった。
そう思いながらマーガレットがゆっくりと外に歩き出そうとすれば、不意に「レディ」と声をかけられた。その声は落ち着いた男性のものであり、低くて心地のいいものだ。
驚いてそちらに視線を向ければ――そこにはさらりとした漆黒色の髪を持つ、美しい男性が立っていた。
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