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「……旦那様」
ゆっくりと彼のことを呼べば、クローヴィスが真剣な目線でマーガレットのことを見つめてくる。
「俺は、マーガレット以上に俺のことを想ってくれる女性はいないって、思っちゃった」
「……それ、は」
「媚薬に侵された俺を、マーガレットが身を挺して助けてくれた。……それに、心を打たれたんだ」
真剣な面持ちと声音でそう言われ、マーガレットの心がきゅんとするような気がした。が、それを言葉にすることはせず、そっと顔を背ける。その手は相変わらずクローヴィスの衣服を掴んでしまう。先ほどの口づけで腰が抜けてしまったかのように、身体に力が入らない。
「だからさ、マーガレット。俺は、今後マーガレットのことを本気で落としにかかるよ」
耳元で艶っぽくそう囁きかけられ、マーガレットの身体の奥がまたぞくぞくとする。頭がぼんやりとして、思考回路まで犯されてしまったかのようだ。
でも、それよりも……。
(落としにかかるって……惚れさせるっていうこと、よね……?)
クローヴィスの言葉に、引っかかってしまう。
もしも、惚れさせるということは。クローヴィスに本気で愛されるということなのだろう。……そんなの、ある意味耐えられない。
(こ、こんな優良物件に愛されるなんて、私じゃ、無理だわ!)
公爵という身分であり、容姿もいい。性格もよく、周囲から慕われている。
そんな人に本気で愛されるのは……きっと、美しいお姫様のような人物。
少なくとも、マーガレットではクローヴィスのお姫様にはなれないだろうに。
「わ、私は、旦那様の、お姫様には……!」
ぶんぶんと首を横に振ってそう言えば、クローヴィスはくすっと声を上げて笑った。かと思えば、マーガレットの耳に息を吹きかけてくる。
「ひゃぁああっ!」
その行為に驚き悲鳴を上げ、クローヴィスの身体に縋りつく。すると、彼は「お姫様なんて、いらないよ」と優しく言ってくれた。
「俺が欲しいのはマーガレット。……俺のことを救おうとしてくれた、可愛らしくて優しい女の子」
今度は視線を合わせて、しっかりと言われた。
その所為で、マーガレットは頭から湯気が出てしまいそうなほどに、顔に熱を溜めてしまった。
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