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「……えぇっと」
「うん? どうかした?」
クローヴィスはさも当然のようにソファーに腰を下ろしたが、ここはマーガレットの使う部屋ではないのだろうか?
そう思い怪訝そうな表情をマーガレットが浮かべれば、クローヴィスは「俺も、この部屋を使うよ」と何のためらいもなく言葉を発する。
「え? えぇっ!?」
思わず大きな声を出してしまえば、彼は「当然じゃない」と言って肩をすくめる。
「俺たち、夫婦なんだから。私室を共有してもおかしくはない関係性だよ」
「そ、それは、そうですけれど……」
クローヴィスの言っていることは間違いない。でも、やっぱり……なんというか。
そう思い寝台の方に視線を向ければ、寝台は当然とばかりに一つしかない。……つまり、今日の夜はクローヴィスと一緒に寝るのか。
(……って、なに変な想像をしているのよ! なにもないに決まっているじゃない!)
自分自身にそう言い聞かせ、悶々とするマーガレットを他所に、クローヴィスは持ってきたのであろう仕事を始めてしまう。それを見ていると、意識しているのが自分だけのような気がして、何とも言えない気持ちになった。
「旦那様、奥様。湯あみの準備が整いました」
それからしばらく悶々としていれば、別邸の侍女にそう声をかけられる。それに驚いてクローヴィスの方に視線を向ければ、彼は「俺は少し仕事がしたいから、先に入っておいで」と言ってくれた。
「……はい」
その言葉は素直に嬉しかったので、マーガレットは頷く。
そのまま部屋の隣にあるという浴室に向かい、マーガレットはバスタブに張ってあるお湯にゆったりと浸かる。
湯あみをしていれば、身体は落ち着いていく。……まぁ、心はこれっぽっちも落ち着いていないのだが。
(……本当に、どうなるんだろ)
悲しいことに、そう零しても誰も答えなどくれない。浴室の真っ白なタイルを見つめながら、マーガレットはため息を零していた。
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