触れ合い

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 浴室で侍女に身体を洗ってもらい、マーガレットは先ほどよりもラフなワンピースを身に纏って、部屋へと戻る。  そうすれば、部屋の中ではクローヴィスが仕事に集中していた。真剣な面持ちで書類を広げ、中身をチェックしているクローヴィスは、夫という贔屓目を抜いてもとても素敵だった。 (って、なに素敵って思っているのよ! ……私たち、契約上の夫婦じゃない)  たとえクローヴィスが契約上ではなく、本当の妻としてマーガレットを愛したいと言ってくれたとしても。マーガレットからすればそれは突然のことであり、いきなりはいはいと受け入れられる問題ではないのだ。  そんなことを考えていれば、不意にクローヴィスの視線がマーガレットにやってきた。彼は少し口元を緩めると、「おかえり」と言ってくる。……その声の節々にはほんのりとした甘さがこもっているようだ。 「え、えぇ、戻り、ました」  ちょっとだけ上ずったような声でそう返事をすれば、クローヴィスは書類を素早く鞄にしまい込む。どうやら、仕事は終わりらしい。 「旦那様。……その、お仕事、は?」 「マーガレットがいるのに、仕事なんてしている暇はないからね」  マーガレットの問いかけに、クローヴィスはさも当然のようにそう返す。その後、マーガレットに自身の隣に腰掛けるようにと言ってくれた。だからこそ、マーガレットは彼と少し距離を開けて、ソファーに腰掛ける。 「なんで、そんなに距離を取るの」  クローヴィスはマーガレットが少し距離を取ったことが、不満だったらしい。そう言いながら、マーガレットににじり寄ってくる。 「え、えぇっと……その」  対するマーガレットは、じりじりと後ずさる。けれど、すぐにソファーの隅っこにやってきてしまい、逃げるに逃げられない。  マーガレットが一人戸惑っていれば、クローヴィスの腕が伸びてきて、マーガレットの華奢な身体を引き寄せる。そのまま、彼はマーガレットの身体を強く抱きしめてきた。
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