プロポーズ!?

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「……クローヴィス様に、お教え出来るような事情では」 「そうですか。……では、こうしましょうか」  マーガレットの回答を聞いて、クローヴィスは「教えてくれないかな?」と甘えたような口調で告げてくる。  その口調に驚きマーガレットが彼のことを見つめれば、彼は悪戯が成功した子供のように無邪気な笑みを浮かべる。 「俺、本当はこういう口調なんだ。……この口調だったら、話しやすくないかな?」  にっこりと笑ってそう問いかけられると、毒気が抜かれてしまう。  そう思いマーガレットは「……私は、マーガレット・アストラガルスと申します」と淡々と自己紹介をする。 「私の家であるアストラガルス子爵家は、貧乏なのです」 「……」  初対面の人にこんなことを話すなど、醜聞になりかねない。  けれど、クローヴィスはマーガレットの事情を言いふらすような人には見えなかった。それに、彼は真摯に問いかけてくれている。それは、声音の節々からよく伝わってくる。そのため、マーガレットは言葉を続けた。 「それこそ、夜逃げか没落かの二択を迫られているほどでございます」 「……そっか」 「はい。なので、私はこの舞踏会でなんとしてでもいい男性を捕まえなければならないのです」  目を伏せてそう言えば、彼は何かを考え込むような素振りを見せた。しかし、マーガレットはそんなことお構いなしとばかりに最後に「まぁ、父に命じられただけなのですが」と言って笑う。  貴族の令嬢にとって、当主である父の命令は絶対的なものである。それはクローヴィスだってわかっているはずだ。その証拠に、彼はマーガレットの最後の言葉を聞くとその表情を痛々しく歪めていた。 「マーガレット嬢……」  クローヴィスが何処となく切なげにマーガレットの名前を呼ぶ。けれど、マーガレットはそれを気にすることなく、「では、私はこれにて失礼いたします」と言ってぺこりと頭を下げた。
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