了承

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「俺はね、形だけの妻を探しているんだ。俺と結婚してくれて、俺に愛を求めない人。……キミは、見たところ結婚に愛よりもコネを求める人種のようだし……俺の理想なんだ」  最後の部分は甘ったるい声だった。なのに、前の文章の所為で全く甘ったるく感じられない。  そんなことを思いながら、マーガレットは返事をためらう。 (クローヴィス様のおっしゃっていることは、正しいわ。私は結婚に愛なんて求めない。欲しいのは、お金とコネ)  目を瞑ってそう思っていれば、クローヴィスの手がマーガレットの手を握る。そのまま彼は白い手の甲に口づけを落としてきた。驚いてマーガレットは手を引っ込める。 「マーガレット嬢。どうか、俺と結婚してほしい」  真摯な目でそう訴えられ、マーガレットの心が結婚する方向に傾いていく。でも、あと一歩が踏み切れない。  そう思い眉を下げていれば、彼は「じゃあ、こういうのはどうかな?」と言っていたずらっ子のような無邪気な笑みを浮かべた。 「俺と結婚してくれたら、衣食住完全補償。なんだったら、キミの実家に支援させてもらうよ」  そして、彼の美しい唇があまりにも魅力的で甘美な言葉を紡ぎ出す。  その所為だろうか。マーガレットは思いきり息を吸って――答えた。
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