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重苦しい瞼を開けて、マーガレットはそっと身体を起こした。
その瞬間、ずきんとしたような腰の重い痛みに顔をしかめ、また寝台に倒れこむ。
「……わた、し、どうなったんだっけ」
それからそう呟き、マーガレットは天井を見つめた。ここはいつも眠っている私室の寝台ではないようだ。
それよりももっと豪奢で、広くて、ふかふかで……。
「もしかして、ここ……?」
一つの可能性が思い浮かび、マーガレットは天蓋のカーテンを開け室内を見渡す。
……あまり使われていないためか、半分物置となっているこの部屋。ここは、間違いなく――。
「……夫婦の寝室じゃない」
そう呟いて、マーガレットはもう一度寝台に横たわる。ずきずきと痛む頭を押さえながら、記憶の引き出しを引っ張り出す。そうすれば、あっけなく眠りに落ちる前の記憶が出てきた。
そうだ。自分は媚薬を盛られたクローヴィスを助けるために、この身体を使って――。
思い出すだけで、火が出そうなほどに顔に熱が溜まっていく。けれど、今はそれどころではない。そう思い頭を横に振り、マーガレットはそっと天蓋を見つめた。
(いや、私よりも旦那様の方が……)
マーガレットは身体を使っただけだ。が、クローヴィスの方は相当媚薬が回ってしまっていた。なにか彼の身体に悪影響がなければいいのだけれど。
そんなことを思いながら天蓋をぼうっと見つめていれば、寝室の扉が開いたのがわかった。
ハッとしてマーガレットがカーテンの隙間からそちらを見つめれば、そこにはジビレがいる。彼女はマーガレットに気が付くと「奥様」と小さな声でマーガレットのことを呼んだ。
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