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(……なんていうか、不思議)
そんな彼の様子に、マーガレットは一抹の寂しさを覚えてしまった。自分だけがひどく意識している。
彼からすれば、あれは所詮薬を抜くための行為だったのだろう。そう思うと、何故か胸が痛むような気がした。
「マーガレット?」
マーガレットが返事をしないためか、クローヴィスが怪訝そうな表情でマーガレットの名前を呼ぶ。そのため、マーガレットはハッとして「だ、大丈夫です!」と返事をする。
「そ、その、旦那様の方こそ、もう、大丈夫ですか……?」
毛布を口元まで引き上げながらそう尋ねれば、彼は「うん、もう少しの間安静だけれどね」と肩をすくめながら言う。
「マーガレットのおかげだよ。……本当に、ありがとうね」
にっこりと笑ってそう言われ、マーガレットの顔がカーっと熱くなる。行為の最中に見た彼の艶っぽい表情を思い出してしまって、身体中が熱くなるような感覚だった。
(って、一体私はいつの間にこんなにも淫らに……!)
たった一度クローヴィスと交わっただけなのに、マーガレットの身体は確かに彼を求めるようになってしまっていた。
それに自分自身で幻滅しながらも、毛布で顔を隠す。すると、彼は「……あと、ごめんね」と言いながらゆるゆると首を横に振った。
「契約的な結婚だったのに、半ば無理やり純潔を奪うような真似をして、本当にごめん」
……謝らないでほしかった。
心の奥底でそう思いながら、マーガレットは「構いま、せん」と今にも消え入りそうなほど小さな声で言う。
(……もしかして、旦那様にとって、私と交わるのは不本意だったの……?)
そして、胸中にそんな女々しい感情が芽生えてしまう。
クローヴィスは自分と交わるのが不本意で、仕方がなく交わったのではないか。そんな想像をすると、何故か胸が痛んだ。
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