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「だから……その、マーガレットさえ、よかったら、なんだけれど……」
クローヴィスがほんのりと頬を染め、視線を逸らしながらマーガレットに声をかけてくる。
その表情や仕草にマーガレットが驚いていれば、彼は意を決したように「……お礼、させてくれないかな?」とボソッと零す。
「お礼、ですか?」
予期せぬ彼の言葉を繰り返せば、彼はにっこりと笑って頷いてくれた。
「こんなにも俺のことを助けようとしてくれる女性は、マーガレットしかいない。そう思ったし、なによりもマーガレットに俺がお礼がしたいんだ」
そんなもの、夫婦なのだから必要ないじゃないか。
そう口に出そうかと思ったものの、彼の純粋な目を見ているとそんな気持ちは消え失せていく。
ここは素直にお礼を受け取った方がいい。直感がそう告げたので、マーガレットは「では、お願いします」と口に出す。
「……そっか。受け取ってくれて、嬉しいよ。ところで、何か欲しいものはあるかな?」
「え、えぇっと」
「やっぱり、お礼はその人の欲しいものが一番だと思うんだ。……マーガレットさえよかったら、何でも用意するからさ」
ニコニコと笑いながらクローヴィスがそういうので、マーガレットはちょっぴり考えてみる。
(欲しいもの、か)
正直なところ、いきなり言われても何も思い浮かばない。元々欲しかったのは実家の子爵家への援助だが、それはクローヴィスがすでに行ってくれている。弟からお礼の手紙が届くほどなのだ。もうこれ以上それは必要ないだろう。
「何も思い浮かばない?」
あまりにも思い悩むマーガレットを見かねてか、クローヴィスがそう声をかけてくれる。だからこそ、頷けば彼は「……じゃあ、領地に行ってみない?」と突然の提案をしてきた。
「……領地、ですか?」
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