意識しているのは私だけ?

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 意を決してクローヴィスの方を見つめれば、彼は馬車の窓から外の景色を眺めていた。その横顔さえ何処となく色っぽく見えてしまって、結局マーガレットは視線を逸らした。……彼の顔は、目に毒だ。 (あのときの余裕のない表情も、素敵だったわ……)  不意にそう思ってしまって、マーガレットはその考えを振り払うかのように首を横に振った。ダメだ。意識してはダメだ。そう自分に言い聞かせるのに、言い聞かせれば言い聞かせるほど、余計に意識してしまって。逆効果だった。  そんなとき、ふとマーガレットの腰を抱き寄せていたクローヴィスの手が、抱き寄せる場所を腰から肩に変える。そのまま彼は、マーガレットの頭を自身の肩に押し付けてしまった。 「……マーガレット」  優しい声で名前を呼ばれ、マーガレットの心臓が大きく音を鳴らした。顔に熱を溜めていることを悟られたくなく、顔を背け「どう、なさいましたか?」と問う。すると、彼は「……俺のこと、幻滅しちゃったかな?」と質問を返してきた。 「ど、どうして、そう思われますの……?」 「いや、なんとなく。……っていうか、最近のマーガレット何となくよそよそしいからさ。……あんな風にしたから、嫌われるのは覚悟の上だったんだけれどね……」  ははは。  そう声を上げて笑うクローヴィスの声は、何となくだが寂しそうだ。 (違う。むしろ、逆なのよ……)  クローヴィスの言葉に心の中だけでそう返し、マーガレットは「そ、そんなことは、ありません」と告げる。これが、精一杯だった。 「……むしろ、その」  ――意識してしまった。  そう言おうとして口を開き、彼を見つめる。そうすれば、彼の端正な顔が視界いっぱいに広がった。
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