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目があった。
相手は優しく微笑んだ。
私は、目をそらす。
相手は、吹奏楽部の先輩だ。
外で会うと気まずいのはどこでも同じなのではないだろうか。
メガネの奥では先輩の優しい瞳が私を見つめていた。
私は先輩と目を合わせると、軽く会釈をする。
と、先輩が近づいてきた。
「じゃあまた明日の部活で」
先輩の切なげな表情は、私の心を移しているよう。
きっと先輩も気まずいのだ。
私は目から溢れてきそうなものを必死にこらえると、無理に笑った。
先輩は、目元を上げると長い髪をなびかせながら歩いていく。
きっとこれは恋じゃない。
だって、先輩は女子なんだから。
私は、先輩に告白したときのことを思い出し叫んだ。
「先輩……ッ!いつまでも好きですからっ!」
先輩は振り返りそうで振り返らなかった。
振り返ったとしても返ってくる言葉が「ごめんね。」だということぐらいはわかっていた。
完
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