11人が本棚に入れています
本棚に追加
ケーキの理由
今日は私の誕生日でもないし、お父さんもお母さんも違う。
両親の結婚記念日でもなければ、出会った日も付き合った日だって春だった。
この家を建てたのは秋だったし、推しなどの記念日でもない。
何だろう。
考えてもいつもわからなくて、私はただ出されるケーキを見つめた。
「母さん、まぁ、そろそろ……朋夏も十二歳だし、今年はちょうどキリだろ?話してもいいんじゃないか?」
ケーキを切ろうとナイフを持ったお父さんがそう言ってナイフをまたテーブルに戻す。
お母さんも黙ってイスに座ったのを見て、お父さんはまっすぐ私を見た。
「朋夏、今日はお祝いでもあって……」
お父さんが口を開くと、お母さんは小さなアルバムを私の前に置く。
見たこともない小型のアルバム。
「……見ていいの?」
聞くと、二人は顔を見合わせてからゆっくりと頷いた。
最初のコメントを投稿しよう!