ケーキの理由

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 白い小さなアルバムは一枚目には何もなく、更に開いた見開きにはニ枚の白黒のエコー写真。  その次にもニ枚同じような写真があるだけで、後は何もなかった。 「……これ……は?」  写真を見たまま聞いてみる。  私のエコー写真ではないことはわかっていた。  私のは赤ちゃんの時の写真と共にアルバムに貼ってあったから。 「朋夏のお兄ちゃんかお姉ちゃんだった子よ」  お母さんの声がいつもと違って聞こえるのはお母さんが涙を堪えているからかもしれない。  白く浮かんでいるように見える……小さな、まだ形もはっきりとはわからない赤ちゃん。 「この子が居るってわかったのが一月十五日なんだ」  お父さんがエコーを撫でて小さく息を吐く。  そして、一度お母さんを気遣うように見てから、ゆっくりとこっちに視線を戻した。 「二週間後、凄く大きくなってるだろう?」  ページをめくって頭と体がわかるようになった……でも、まだ手足もわからない写真を見つめる。  お父さんの顔は慈しむような……でも、やはり寂しさが滲む気がした。 「……この先がないのは……」  ためらいつつも聞こうとした声が震える。 「あぁ、九週……突然出血してそのまま流産してしまった」  お父さんはそれだけ言ってお母さんの手を握りながらゆっくり目を閉じた。  お母さんは泣いていて、私は何と言ったらいいのかわからない。  静かなリビングダイニングでただ秒針だけがいつも通り時を刻む。
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