ケーキの理由

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「十五年前の今日は……」  お父さんが目を開けて口を開いたのに気づいて、私もその視線の先にあるエコーを見た。 「母さんのお腹に赤ちゃんが居るってわかって、二人で大喜びした日なんだ」  テーブルの上で重なっていた手。  お父さんは両手でお母さんの手を握って優しく微笑む。 「それは悲しい思い出じゃなくて……幸せな思い出、だろ?」  こんな優しい目をするお父さんは初めて見た気がした。 「それに……」  言いながらこっちを見られて、私は思わず姿勢を正す。 「朋夏がお腹に居るってわかった日でもあるんだよ!」 「そうなの!?」 「あぁ!俺たち家族が始まった日なんだ」  お父さんが片手を伸ばして私の手を握ると、お母さんも手を出してそこに重ねた。  あったかいその手はどこか懐かしくて、少し照れくさくもある。 「だから、特別な日?」  お母さんの方を見て笑うと、 「……そうでしょ?」  お母さんもちょっと照れたように口を尖らせた。
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