もしも、ぼくが。

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ぼくの命は、あと三か月だそうです。 病室の窓から、見える景色があります。 公園のベンチに、座って、泣いている女の人がいます。 彼女は、大好きな彼に、別れを告げました。 彼が、遠くに転勤するからです。 もしも、ぼくが、彼女だったら、 彼を追いかけて、 「大好きだから、ついて行く」 と、伝えます。 公園で、幼い子と遊んでいる親子がいます。 もしも、ぼくが、お父さんだったら、 我が子に、 「一生愛してる」 と、伝えます。 道端に、ゆっくり散歩をしている、老夫婦がいます。 もしも、ぼくが、おじいさんだったら、 おばあさんに、 「死ぬ時は、必ず、そばにいる」 と、伝えます。 もしも、ぼくが、産まれたばかりのぼくに会えたら、 「きみの人生は、素晴らしいものになる」 と、伝えたいです。 枕元の薔薇が、輝いています。 ああ。 世界は、なんと、美しいのでしょう。 愛する人が、こんなにもいる。 ぼくは、今まで、生きてくることができて、 本当に、うれしくて、うれしくて、たまりません。 END
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