~卯花杏介side 3~

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「だって、あの……」 「あの?」 「昼間、半谷(はんがい)くんと2人きりだったのに……卯花さん、凄く平気そうに見えたので」  俺がどれだけ前から、あなたに惹かれていたのかということを明莉さんは知らない。  仕事を済ませたら帰ろうと思っていたところに、渡谷さんと半谷翼(はんがいつばさ)くんが一緒にいるところを見かけてしまった。  翼くんに声をかけてもらわなかったら、自分から声をかけるつもりでいたくらい2人の関係に嫉妬していたことを彼女は知らない。 「まだ足りないみたいですね」 「……足りない?」 「俺が、どれだけ明莉さんを好きなのかということを」 「え、卯花さ……」  自分が躊躇していたせいで、明莉さんはたくさん傷ついた。 「嫉妬していましたよ」 「え、あ……っ」 「俺が、どんな様子で、どんな想いを抱いていたのか」 「卯花さん……」  どんな言葉を用意すれば、明莉さんに自分の気持ちが届くだろうか。 「あの……」 「今日は仕事でお疲れでしょう? 誠心誠意、尽くさせていただきます」  行為でしか、自分の気持ちを伝えることができない自分は格好悪い。  明莉さんに自分の気持ちが届くまで、何度でも伝えたい。  他人の人生に関わるって、そう簡単なことじゃないからこそ自分の気持ちを伝え続ける。 「んっ、杏介さ……」 「知ってください、どれだけ俺が明莉さんに惚れこんでいるのかということを」  明莉さんとの関係を、他人で終わらせないために。
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