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「だって、あの……」
「あの?」
「昼間、半谷くんと2人きりだったのに……卯花さん、凄く平気そうに見えたので」
俺がどれだけ前から、あなたに惹かれていたのかということを明莉さんは知らない。
仕事を済ませたら帰ろうと思っていたところに、渡谷さんと半谷翼くんが一緒にいるところを見かけてしまった。
翼くんに声をかけてもらわなかったら、自分から声をかけるつもりでいたくらい2人の関係に嫉妬していたことを彼女は知らない。
「まだ足りないみたいですね」
「……足りない?」
「俺が、どれだけ明莉さんを好きなのかということを」
「え、卯花さ……」
自分が躊躇していたせいで、明莉さんはたくさん傷ついた。
「嫉妬していましたよ」
「え、あ……っ」
「俺が、どんな様子で、どんな想いを抱いていたのか」
「卯花さん……」
どんな言葉を用意すれば、明莉さんに自分の気持ちが届くだろうか。
「あの……」
「今日は仕事でお疲れでしょう? 誠心誠意、尽くさせていただきます」
行為でしか、自分の気持ちを伝えることができない自分は格好悪い。
明莉さんに自分の気持ちが届くまで、何度でも伝えたい。
他人の人生に関わるって、そう簡単なことじゃないからこそ自分の気持ちを伝え続ける。
「んっ、杏介さ……」
「知ってください、どれだけ俺が明莉さんに惚れこんでいるのかということを」
明莉さんとの関係を、他人で終わらせないために。
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