声の芝居で食べていくためなら

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声の芝居で食べていくためなら

 私は、自分の人生を変えたかった。  私は声の芝居が好きだから、自分の人生を変える必要があると思った。 「順調に仕事が増えているみたいですね」 「ありがとうございます」  卯花さんからいただいている仕事ではないけれど、私の仕事を理解してくれていることへの感謝を伝えるためにお辞儀。  フローリングから卯花さんを見上げるかたちだったけれど、卯花さんはすぐに私と目線の高さを合わせようと動いてくれる。 「エロゲーはセリフ数が多いので、も~う~! 毎日が楽しくて楽しくて!」  私の気持ちを肯定してくれた卯花さんのためにできることは、年を重ねても声優として食べていくこと。  そして、声優業界とファンの皆様から少しでも多くの信頼を得られる声優になること。 「これも、卯花さんのおかげです」 「俺は何もしていませんよ」  自分の犯した罪は世間に公表されないだけで、渡谷明莉の信頼は1度失墜した。 「声の出し方、違うと思うので」 「っ! 卯花さんっ!」  だからこそ、私は声の芝居を通して信頼を取り戻しに行く。  それが、今の私にできること。  今の私がやりたいこと。 「確かに……えっちなゲームでの芝居と、普通のアニメーションやゲームでの芝居が違うって学ぶことができたので、こうして仕事が増えているわけで……」  話を逸らそうとしながらも、真面目な話を繰り広げる。  親友の夜耶ちゃんが18歳以上の人たちが触れることのできる作品と、どんな年齢の人でも触れることができる作品の両方で活躍している理由を、少しずつ理解し始めた今日この頃。
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