年下の男の子

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内心ギクリとする。虚を衝かれた気分だった。 佐原くんは話を続ける。 「テキパキしてますよね。川田さんって。結婚前はどんなお仕事をされてたんですか」 「事務よ。貿易会社の」 「おーっ、かっこいいですね!」 佐原くんは仰ぐように天井に目をやると 「そこで旦那さんと出会った、と」 つぶやくように言い、踵を返して自席に向かった。席に着くと途端に、隣の席の男性社員と談笑している。 私はと言うと、不思議に沸き立つような胸の鼓動を感じずにいられなかった。 ドキドキしたらいけないと自分に言い聞かせてみても無駄のようだ。私は佐原くんに好意を持ってしまっている。そして、たぶん彼もそう。結婚して5年も経った今になって、私にこんなトキメキが訪れてしまおうとは。しかも相手は一回りも年下の男の子。 こんな気持ち、墓場まで持っていくしかない。
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