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「はい。人妻キラーの啓介様にお伺いしたい。好きな女を食事に誘いたいのでアドバイスお願いします」
「よしよし。今日は素直だね。隆くん。で、その女、人妻なわけ?どこの誰?バイト先にいんの?」
啓介はニコリとほほ笑むと、この上なく優しい視線を俺に向けた。
ひと月ほど前、大学の学生課の張り紙がきっかけで、地元の電気機器メーカーでアルバイトを始めることになった。アルバイト希望の旨を電話で連絡したあの日、電話口に出た声を聴いたあの日から、恋は始まっていたのかもしれない。
彼女の声は低くて少しだけハスキーだ。例えるならピアノの黒鍵が奏でる音色のような声。心の奥底の何かを揺さぶりつつも、安心させる声。聴いているといつのまにか心地よい眠りに誘われそうな…。
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