君の日常を僕にください

年下の男の子

浮気してる？まさかね。彼はそんなことができるタイプではない。じゃ、風俗？そういうタイプでも無い気がする。

――そういうタイプじゃない男が、一番、危ないのよ。

友人の言葉を思い出す。彼女は数年前に夫に浮気され離婚。いまは二番目の夫と幸せな結婚生活を送っている。

――沙耶はボーっとしてるからなぁ。気を付けないと、浮気されるよ。

夫は浮気するタイプじゃないし、私だってそうじゃない。私たち夫婦の間には波風など立つわけがない。じゃ、この拭い去れない不安感は何なの？

私は夫を信頼している。でも正直、愛しているかと聞かれたらビミョウだ。この5年の結婚生活で「愛」とか「恋」とか、そういう感情はとうに薄れてしまった。でも結婚って、そういうものでしょ？セックスも、ここ2年ほどしていない。33歳の私の年齢から言って、こうなるのは早すぎる気もするけれど、夫は今年40になるし、まぁ仕方がないのかも知れない。子供も、もし出来たら可愛いだろうとは思うけれど格別欲しいわけでもない。夫と子育てしていく自分も、何故だかわからないけれど、想像するのが難しい。

このまま何となく生活して、年老いていくのが私の人生だ。それでいいじゃない。安定って何よりも素敵なことよ――

「川田さん、これ、ハンコお願いします！」

席に戻った私は、佐原くんの声でまた我に返る。