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私は財布を開き、中から丁寧に折りたたんだ紙ナプキンを取り出す。
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私、川田沙耶は、佐原隆が社会人になった暁には、佐原隆の妻となることを真剣に検討すると誓います。
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彼の丸みを帯びた字を見ていたら、こらえきれずに涙がポタポタと零れ落ちた。
「う…うっ。うっ……」
幸い、隣にも、前後の席にも乗客はいない。私は声を押し殺して泣き続けた。
やがて、泣きつかれて眠ってしまったらしい。目を覚ますと車窓から見えるのは高速道路の単調な灰色から、富良野の雄大な景色に変わっていた。ラベンダー、ひまわり、マリーゴールド…色とりどりの花が出迎えてくれる。
発着所に着くと、私はペンションに連絡を入れる。オーナーが迎えに来てくれることになっていた。
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