ラベンダー畑

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ふと思いついて洗面所の鏡を覗く。 「きゃ!」 マスカラが落ちてパンダみたいな目になっているではないか。オーナーは、この顔をどう思っただろう。 私は化粧を直し、階下に降りた。 「すみません。こちらで自転車をお借りできると伺ったんですが」 オーナーの奥さんと思われる女性に、フロントで声をかける。 「はい、大丈夫ですよ。今なら3台空いていますからね。お好きなのをどうぞ」 丸顔に人懐こい笑顔を浮かべてくれる。奥さんも、オーナーと同じ年頃だろうか。とても若々しい印象だ。私は彼女と一緒にペンションの外に出ると、自転車を選んで鍵を受け取る。 「本当にいい天気ですね。自転車日和よ」 奥さんは笑った。 「はい、地図どうぞ。気を付けて。暗くなる前に帰ってね」
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