284人が本棚に入れています
本棚に追加
さっそく自転車に乗りこんだ。坂道が多いから、すぐに汗をかく。ペットボトルの水を飲み、持参したタオルで首を拭った。ペアネックレスのチェーンが指に触れて、また涙が出そうになる。涙が零れないように顔を上げ、見渡すと、ラベンダーの紫色がどこまでも広がっている。
「…紫色の絨毯」
思わずつぶやいていた。キレイだったけれど、どこか寂しい色にも見える。それは私の気持ちのせいだ。この景色を隆くんと見たかった。そうできなくしたのは自分なのだが。
私は小一時間走って、昼食を食べにジャガイモ料理のレストランに寄り、ペンションに帰り着いた。
「おかえりなさい。ラベンダー、キレイだったでしょ」
フロントで奥さんが声をかけてくれる。
「はい、とってもキレイでした。明日は気球に乗ってみようかと」
「いいわね、じゃあ、予約を入れておくわね」
「ありがとうございます」
部屋に戻ろうとした私に、奥さんが声をかけた。
「夕食は19時からをご希望よね。お風呂は今すぐでも入れますからね」
最初のコメントを投稿しよう!