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「本当にすみません…」
「大丈夫ですよ。ゆっくり休んで。食べられそうなら、あとでおにぎりでもお持ちしますね」
「ありがとうございます」
奥さんはニコリと笑って廊下の向こうに歩いて行った。と思ったら、振り向いて部屋のほうに戻ってくる。
「そうそう。明日、気球から戻ったら、フロントに寄ってもらえるかしら?」
「え…あ、はい」
「プレゼントを用意してるの。きっと、あなたの体調不良によく効くプレゼントよ」
ウィンクをして、階下に戻っていく。おちゃめな表情をするんだな。思わず口元が緩んだ。
翌朝、私は朝食を済ますと熱気球のアクティビティに参加し、上空から富良野の雄大な自然を満喫した。色とりどりの花々が織りなす絨毯は、私の心を優しく包んでくれるようだった。
いつまでも泣いてちゃいけないよ、そんな風に言ってくれているように感じて…。
ああ、来てよかった。心からそう思った。
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