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すると、部屋の中から突然誰かの手が出てきて、私の腕を掴む。
「きゃあっ!!」
私は叫び声をあげた。
次の瞬間、私はその人の胸に倒れこみ、強く抱きしめられていた。
愛しくてたまらない、あの温もりだ。誰なのかは顔を見なくてもわかる。
「…隆くんなの…?」
「他に誰がいるんだよ?」
見上げると、隆くんの顔がそこにあった。
「…どうして、どうしてここにいるの…」
私は泣き出していた。彼はドアを閉めると私を両腕で再び力強く抱きしめる。
「どうしてって、沙耶さんがラベンダーの花言葉の話なんかするからじゃん」
「…調べたの?」
「うん。『あなたを待っています』だろ」
隆くんは言う。
「もうあきらめろよ。言ったでしょ。『ずっとずっと、離さないから。沙耶さんが嫌だって言っても、絶対に傍にいるから』って。俺はしつこいの。沙耶さんがちょっと富良野に来たくらいじゃ、ぜんぜん逃げらんないの」
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