ラベンダー畑

20/27
前へ
/330ページ
次へ
すると、部屋の中から突然誰かの手が出てきて、私の腕を掴む。 「きゃあっ!!」 私は叫び声をあげた。 次の瞬間、私はその人の胸に倒れこみ、強く抱きしめられていた。 愛しくてたまらない、あの温もりだ。誰なのかは顔を見なくてもわかる。 「…隆くんなの…?」 「他に誰がいるんだよ?」 見上げると、隆くんの顔がそこにあった。 「…どうして、どうしてここにいるの…」 私は泣き出していた。彼はドアを閉めると私を両腕で再び力強く抱きしめる。 「どうしてって、沙耶さんがラベンダーの花言葉の話なんかするからじゃん」 「…調べたの?」 「うん。『あなたを待っています』だろ」 隆くんは言う。 「もうあきらめろよ。言ったでしょ。『ずっとずっと、離さないから。沙耶さんが嫌だって言っても、絶対に傍にいるから』って。俺はしつこいの。沙耶さんがちょっと富良野に来たくらいじゃ、ぜんぜん逃げらんないの」
/330ページ

最初のコメントを投稿しよう!

284人が本棚に入れています
本棚に追加