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隆くんは私がひとしきり泣いて、泣き止むまで待ってくれた。フロントに挨拶に行くことにする。
「まぁまぁ、沙耶さんボロボロの顔ね。でもね、とっても綺麗」
奥さんは涙ぐんでいる。
「二人でラベンダー、見てきなさいな」
私達は自転車に跨がるとラベンダー畑に向かった。辺りは昨日よりも鮮やかな色彩に色づいて見える。景色も花も、気持ち次第で見え方が変わるんだな、と実感する。
「すげーー!キレイだな。沙耶さんの言った通りだ。紫色の絨毯だ!」
彼は大興奮だ。
自転車を降り、手をつなぐと並んで歩き出す。この手のぬくもりを、またこうして感じられていることが信じられない。まるで夢の中にいるようだった。
「沙耶さん、結婚ってさ、なんだと思う?」
彼が訊く。
「えっ…なんだろう。ひとことで言うの? 難しいなぁ」
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