年下の男の子

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「お疲れ様!」 「お疲れ様です」 5時になった。終業時間だ。社員はまだまだこれからが仕事の本番のようだが、私達アルバイトはきっかり5時で退社できる。こういう気軽な身分が有難い。 独身の頃は日付が変わるまで働いたこともあった。そんなときに優しく声をかけ励ましてくれたのが、同じ会社で働いていた7歳上の夫、芳夫であった。あの頃は幸せだったと懐かしく思い出す。彼のことをちゃんと好きだった。恋をしていたのだ。 スーパーに寄り、今日の夕飯の材料を選ぶ。夫の帰りは遅いし、家で食事をするとも限らない。それでもキチンと食事をつくる。食べてもらえないときは朝食に回す。食卓を用意することだけが夫と自分の唯一のつながりのような気がするから、これだけは手を抜けなかった。 「あれ、川田さん!」 明るい声で呼び止められた。 「佐原くん」 「今から家に帰ろうと思ったら、飯ないんですって。母が出かけちゃってるみたいで。それで、自分で作ろうかなって。こう見えても俺、料理するの結構得意なんですよ」 カゴの中を見るとジャガイモ、ニンジン、玉ねぎ、豚肉… 「今日はカレーね?」 私が言うと 「やべ、バレました?唯一のレパートリーです」 佐原くんは照れたように笑った。…可愛い。
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