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レジに並び、会計を済ませ、品物を袋に詰めていると隣に佐原くんが並んだ。
「家、坂の上のほうですよね?俺もそっちなんです。良かったら途中まで荷物持ちますよ。重そうだし。そのペットボトルとか」
確かに、2リットルのペットボトルは少々重そうだと思ってはいた。
「え、いいの?でも佐原くんのほうが重そうじゃない」
「見くびらないでください。鍛えてますから!」
右腕に力こぶを作って笑って見せた。私も笑って、お言葉に甘えることにした。
家までの道を並んで歩く。彼は21歳。私との年齢の差はちょうど一回りだ。こんな弟がいたら楽しかったろうなと思う。私には兄弟はいない。
「実は、ですね」
佐原くんが口を開く。
「いま、川田さんがスーパーに入っていくのを見て、追っかけちゃいました」
そこで言葉を切り、続ける。
「ストーカーじゃないっすよ?」
私が笑うと
「俺、あの会社でバイトするようになってから何回か、川田さんが会社出てからこのスーパーに寄るの見て、なんかいいなぁって思っちゃって。スーパーから出てくるとき、手提げのエコバッグからネギが飛び出してるのとか、なんか…」
思わず吹き出した。
「なにそれ!何フェチよ!」
彼は照れ臭そうにしながら
「マザコンじゃないっすよ?」
と言った。
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