遭遇

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「隆は私の王子様なの。小さい頃から、ずっと。だから振り向いてほしくて、気を引くつもりで他の人と付き合ったりした。だって、隆が私のことを好きじゃないことくらい、知ってたもん」 唇を「への字」に曲げて、涙をポロポロ流している。 この口元ときたら。昔、叔母に見せてもらった漫画の『忍者ハットリくん』にそっくりだ。幼稚園の頃から変わっていない泣き顔だ。今までいったい何回この顔を見せられたことか。 「私は、今まで彼氏は何人かいたけど、誰ともいかがわしい関係になったことはありません。だって、隆のことをずっと好きだったから」
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