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俺が羨んでやまない沙耶さんの夫。世界でたった一人だけ、沙耶さんの作った夕飯を食する権利を有する男。その人がそこにいる。しかも女性と一緒に。振り向きたくて仕方なかった。
「振り向いてもいいでしょう。一緒にいるのは誰ですか? 知ってる人?」
「振り向いちゃダメ。そう。知っている人」
「まさか…旦那、不倫してるんですか?」
沙耶さんの淡々とした話し方と表情からは、真意が汲み取れない。傷ついているのだろうか。それとも…?
「うん、たぶん、不倫していると思う」
その声が、俺の腹にズシリと響いた。
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