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まさか、沙耶と…。
社内に私と芳夫の仲を疑う噂があることは知っていた。噂は公然の秘密のような雰囲気で語られていたし、当然、沙耶の耳にも届いていたはずだ。
私の胸に、得体の知れない黒い燻りが広がり始めていた。
「三好さん、聞いた? 川田課長と宮下さん、結婚するらしいって! なんと、宮下さんからアプローチしたらしいわよ」
同じ秘書課の先輩が、耳打ちしてくる。
「宮下さん、大人しそうな顔してやるわよねぇ。ま、ああいうタイプのほうが却って積極的なのかもね」
私は言った。
「良かったですよね。沙耶は早く結婚したがっていたし、家庭的ないい子だから」
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