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「アタシも夕飯の買い出しがてら、チョット街マデ出かけてくるネ。いくら休日デモ、飯の用意はしなきゃいけないからナ」
次に奇妙なイントネーションで口を開いたのは、桃色のカンフー服を着たお団子頭の小柄な少女──東方の大国〝辰〟出身の武術家・陳露華である。
一見、女児のように幼い外見ながら、家伝の武術〝双極拳〟とともに辰国料理も得意な彼女は、一味の料理番を任されていたりもするのだ。
「あ、じゃあ、わたしも一緒に行く! 欲しい原質(※鉱物)や道具とかいろいろあるし」
露華のその言葉には、となりにいた赤ずきんをかぶる甘ロリ風エプロンドレスの金髪おさげ少女── マリアンネ・バルシュミーゲも手を挙げて便乗する。
彼女もまた変わった経歴を持ち、ダーマ人(※迫害されている戒律教徒の民)にして、いまはなき父親譲りの錬金術師だったりする。
「旦那さまはどうなさいますか?」
他方、茶色いジャーキン(※ベスト)を着たやはり船乗り風の少年サウロ・ポンサは、となりに立つ時代錯誤な全身甲冑姿の騎士を見上げてそう尋ねる。
サウロはこの騎士……いや、もとエルドラニアの騎士であるドン・キホルテス・デ・ラマーニャの、騎士時代からの従者なのだ。
「それがしは特に用事もないしの。いつものように剣の修行でもして一日過ごすといたそう」
サウロの問いに、キホルテスは威風堂々と仁王立ちしたままそう答える。
「それでは私も庭いじりでもしながらゆっくりしたいかと」
その答えに、サウロもアジトに残ることを決め、マルクにその旨を伝える。
「なら、居残り組は僕とドン・キホルテス、それにサウロだね。僕も今日は祈祷所に籠って、魔導書の研究に勤しむとするよ」
皆の予定を聞いたマルクも自身のそれを告げ、こうして禁書の秘鍵団の面々は、各々の休日を楽しむために方々へ散って行った──。
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