24人が本棚に入れています
本棚に追加
線の細い、優等生タイプと言われる自分と、おおらかそうな福島の組みあわせは、見た目にも性格的にもバランスがいいとは思う。だがデビューして四年目、思っていた以上に二人のファンの割合に差が出てきて、それを事あるごとに見せつけられるのが、どうにも気にさわる。
しかも、世間に知られている曲、ライブでの人気曲は福島の作曲が多い。作詞の才能は自分の方が上だと坂上は思っているが、詞よりもいいメロディを作ることの方が大事だ。坂上はソロ活動で自分の才能を確かめ、世間に見せつけたいと思っている。
「さすが、余裕か」
つぶやきながら、スタジオでアズマを抱くなんてことをした自分の方がよっぽど余裕だな、と坂上はおかしくなった。アズマにこんなことしてていいの、と言われるのは当然だ。
「なにがさすがだよ、ホントは俺はソロなんてまだ早いって思ってたのにさ」
坂上は、隣の二人の会話には入らず穏やかに客席を見ているアズマに目をやる。なにを考えているのか、その横顔は笑みを含んで美しい。霧に包まれた湖のようでも、砂漠の中のオアシスのようでもある。
アズマは自分達の関係をどう考えているのか、よく分からない。俺なんか抱いて拓のためになるの、と言いながらもあんな所で抱いても拒まないのは、まんざらでもないからだろう。それとも、ただ求められるから抱かせているだけで、飽きるまではセフレとしてつきあってやろうというつもりか。
アズマは日常の人間関係も、誰ともドライな関係のままいたいようでもあるが、はっきりさせたい。
「拓、お前話聞いてる?」
福島が少し不審そうな顔で坂上を見る。
「あ、ああ、ごめん」
アズマと自分の関係を知らない福島を挟んで送られる視線に、アズマも気づいているはずだ。坂上は多少の優越感に浸りながら、申し訳なさそうな顔をして見せた。
最初のコメントを投稿しよう!