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準備が整うと、家族で輪になった。
「よし、まずは姉ちゃんからだ」
「えっ! 私がトップバッター!?」
父さんから指名を受け、姉ちゃんが声を上ずらせる。
「お手並み拝見といこうじゃないか」
ニヤけるじいちゃんを尻目に、
「分かった、やるわよ」
姉ちゃんは深呼吸をした。
眉や目、鼻や唇など。手元にある顔のパーツを、姉ちゃんは触り始めた。
「ほぅ、やるじゃないか」
「さすがは私が産んだ娘ね」
姉ちゃんの手際の良さに、最初こそ感心していたじいちゃんと母さんだったが、
「待て、そこは違うじゃろ」
「だめ! 目が左右逆になってるわよ」
次第にヤジを飛ばすようになってきた。僕はすぐ隣で、ハラハラしながら成り行きを見守っていた。
「ええい、なっとらん! 貸せ、わしがやる」
見かねたじいちゃんが、姉ちゃんを押しのけた。
「ちょっと! まだ私の番なんだけど!」
「危なっかしくて見てられんわい。どんな顔になっとるか、自分でも見てみるんじゃ」
言われて身を乗り出した姉ちゃんは、吹き出した。
「何これ? すっごいブサイク!」
「だから言っとるじゃろ……どれ、ベテランの腕前を見せてやるわい」
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