福嗤い

2/5
前へ
/5ページ
次へ
 準備が整うと、家族で輪になった。 「よし、まずは姉ちゃんからだ」 「えっ! 私がトップバッター!?」  父さんから指名を受け、姉ちゃんが声を上ずらせる。 「お手並み拝見といこうじゃないか」  ニヤけるじいちゃんを尻目に、 「分かった、やるわよ」  姉ちゃんは深呼吸をした。  眉や目、鼻や唇など。手元にある顔のパーツを、姉ちゃんは触り始めた。 「ほぅ、やるじゃないか」 「さすがは私が産んだ娘ね」  姉ちゃんの手際の良さに、最初こそ感心していたじいちゃんと母さんだったが、 「待て、そこは違うじゃろ」 「だめ! 目が左右逆になってるわよ」  次第にヤジを飛ばすようになってきた。僕はすぐ隣で、ハラハラしながら成り行きを見守っていた。 「ええい、なっとらん! 貸せ、わしがやる」  見かねたじいちゃんが、姉ちゃんを押しのけた。 「ちょっと! まだ私の番なんだけど!」 「危なっかしくて見てられんわい。どんな顔になっとるか、自分でも見てみるんじゃ」  言われて身を乗り出した姉ちゃんは、吹き出した。 「何これ? すっごいブサイク!」 「だから言っとるじゃろ……どれ、ベテランの腕前を見せてやるわい」
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加