福嗤い

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 父さんと部屋に向かう途中、僕は笑顔を浮かべた。 「ねぇ、父さん」 「何だ?」 「僕、今日をすごく楽しみにしてたんだ」 「そうか! 皆で一緒に楽しもうな」  肩を叩いてくる父さんに、頷き返した。 「うんっ!」  いつも優しさに満ち溢れる父さん。  僕はそんな父さんのことが大好きだった。  世界一尊敬していた。    もしも誰かに『将来の夢は?』と、聞かれたら、僕は迷わずこう答えるつもりだ。 『いつか父さんのような人になりたい』と。 「皆揃ってるな」  僕と父さんが部屋に入ると、 「二人ともお疲れ様」  母さんが振り返り、 「遅い! 先に始めるところだったわよ」  姉ちゃんが頬を膨らませ、 「いやぁ、しかし楽しみじゃのう」  じいちゃんが豪快に笑った。 「待たせて悪かった。始めようか」  父さんの言葉を合図に、皆が動き出す。僕は父さんに訊ねた。 「僕にも手伝えることある?」 「ん? じゃぁ、目隠し用のタオルを取ってきてくれるか?」  父さんは片目を瞑った。 「あれがないとつまらないだろ?」  父さんはノリも良かった。 「確かに……そうだね!」  目隠し用のタオルを外した時、一体どんな反応をするのか、考えただけでも面白くてしょうがなかった。  僕はお腹を抱えて笑った。
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