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「こ、今度二人で食事に行きませんか。……その、今日は打ち上げ来られないみたいだけど、高須さんとも喜びを分かち合いたくて」
直美はしばらく黙って洋一を見つめていた。洋一は胸を鎖で締め付けられるような思いで返事を待った。
やがて直美の凛とした顔が綻んだ。その表情は、静かな水面に暖かな陽射しが注いでいるときのように煌めていた。
「はい、喜んで」
その返事を聞いた途端、洋一の胸を締めつけていた鎖が弾け飛んだ。彼女の気持ちはまだまだ分からないけれど、少なくとも二人で食事くらいはしてもいいと思われているみたいだ。
「ありがとう。このあとの打ち上げは来られないんだよね?」
「すみません。今日は母の誕生日なので」
なんだ、そういうことか。今日はお母さんの誕生日なのか。彼女について知らないことばかりだ。
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