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「そこで『マインドアウト』の出番だ。被験者の脳波に反応し、思考を書き出し、またその整理を補助する。自分であれこれ書き出す必要はない」
洋一が自信ありげに応答すると、被験者の背後に置かれた大型モニターに文字や図が現れては消え、現れては消え始めた。それと同時に室内にどよめきが起こった。
「あと1分です」
直美がタイムカウントを伝えると、モニターに映る文章や図が徐々に明快なものに変わっていった。
そしてタイマーの音が実験の終了を告げる。モニターには課題文の要旨やそれに対する意見、内容を簡潔に伝える図が整然と映し出されていた。
「……成功ですね、矢吹先生。『マインドアウト』が被験者の思考の過程や考え上げた要旨、結論まで、すべて整理した状態で出力しました」
直美が実験結果を簡潔に報告する。
「ああ。これでほぼ完成だ」
洋一の言葉に、一瞬の間を置いてから狭い室内が歓声で満たされた。
「おめでとうございます、矢吹先生。苦労が実りましたね」
「この装置があれば、複雑な思考も書き出す手間を省いて整理できる。人類の思考力を格段に向上できます。偉大な発明ですよ!」
職員たちは次々と洋一を労い、次いで互いに肩をたたきあった。
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