砂漠の烏が残した、爪跡

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「娘…… あの家の娘だったんだ……」 ユイのお母さんは、再婚の時、 揉めたって言っていた。 それと、関係があるんだろう。 「あなたの母親が、すべてを壊したのよ」 少女は、ユイを見つめながら笑顔を浮かべて 優しい口調で語りかけた。 「たしかに、私のお母様には何もなかった。 でも、一生懸命、お父様に尽くしてきたの。 なんの後ろ盾もないお父様を、支えてきたのに……。あなたの母親が現われたら、 簡単に捨てられたちゃった」 「ちょっと、待って」 私は、少女の言葉を遮った。 でも、少女は言葉を止めようとはしなかった。 感情も抑揚もない、平らな口調。 身震いがするほど、不気味だった。   「お母様は、毎日のように泣いてた。 お母様にとって、お父様はすべてだったのよ。 あなたの母親がお父様を誘惑しなければ、 お母様は捨てられなかったし 自殺する事もなかった‼」
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