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「なるほど。有名人は大変だな。……けどおまえはあれだな、パンダっつうより、犬っぽい」
ふん。
なら、クスクスいい声で笑ってるアンタが飼い主だ。
「はいはい、どうせ俺は犬ですよ。忠犬マナ公っす」
自分たちの関係は、その表現が一番しっくりくるかもしれないと漠然と思い、そして驚愕する。
「え、俺、マジで犬じゃんか」
「は?」
地央自らが先に口にしながら、犬的なポジションであることに気づいてしまった真直が大きな声をあげたことに、驚き返す地央。
「じゃ、せめてバター犬に……」
思わず欲望を声に出して漏らしてしまった真直、それに気づいて、シモネタを得意としない地央からの制裁に備えて身を竦めたのだが。
「バター犬って? 救助犬か何か?」
純粋かっ!!
きっと地央の脳裏には、遭難者救難犬の首の樽が浮かんだのだろう。
正直に答えるべきかどうか逡巡する真直であった。
「さっきは、悪かったな。ちょっと、悪戯が過ぎた」
ベッドの上、ヘッドレストに持たれていた真直の頬に、スイと指が添えられる。
「まだ、痛い?」
頷く真直に、地央は嫣然と笑みを浮かべると、ギシリと音を立ててベッドに上がってくる。
向き合うように真直の太ももに跨った地央が、鼻先まで顔を寄せ、掠れた声で囁いた。
「俺が、舐めて治してやるよ」
直後、真直の唇を割って入った舌先が、真直の上顎を舐めあげる。
痛みと、しかしそれを上回る快感にゾワリと、体が震えた。
「ああ…地央さん…」
クチュリという舌の絡む濡れた音が、真直を一層高めていく。
「はぁ……黒川……」
潤んだ瞳の地央が舌を出したまま身を放し、唾液に濡れた唇を拭いもせず、真直に胸に指を這わした。
「俺、バター犬の意味、わかった……」
欲に浮かされた、溶かされそうな熱い視線で見上げられ。
「おまえ、俺の、バター犬、なんだろ?」
そんな、催促するようなことを言われてしまっては。
「そうだよ」
その体を押し倒さないことなんて、できるわけはなくて。
体を反転させたとたん。
「痛たっ!!!」
ベッドから落ちて目を覚ますのは、最早恒例だ。
「くそー! ヤリてーーーー!!」
俺、もう、どんだけセックスしてないっけ?
指折り数えて、つく溜息。
「ま、オカズには困んねえけどな」
結局。
山口から地央の女装の画像をもらいうけたことは本人は内緒だ。
=いったん終わり=
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