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それって何?
−−−島野瑞希side−−−
借金を多分早く返せるという提案をされ、ゲイ向けソープって何だろうと思いつつも、早く返せるって言うなら頑張ろうと着いていくことにした。
高級車の後部座席に乗せられ、隣には鈴木くん。運転席は鈴木くんと一緒にうちに乗り込んできた人。多分大きな怒鳴り声あげてたのはこの人だろうな。鈴木くんはあんな荒っぽい大声出すタイプではないと思う。
振り向いて、さっきまで一人でいた家を振り返った。
俺は一人っ子なわけじゃなく、年の離れた弟妹がいる。家の片付けがあるだろうからと、弟妹は今従兄弟の家で遊んでいる。
その従兄弟宅で、二人はうちで面倒見るよと言ってくれているが、俺は出来るだけ家族と暮らしたいと思ってた。
五人家族から三人になってしまった家族。でも、借金を返しながら二人を育てていくのは、正直俺の今の給料では厳しい。
借金を返す間、二人には親戚の家で暮らしてもらって、借金を返し終えたら迎えに行くってのが良い案かもしれない。鈴木くんが紹介してくれる仕事でどのくらい稼げるようになるだろう。今働いてる会社もあるから、副業みたいな稼ぎ方が出来るんだろうか。
出来るならきっと、二人が学生のうちに返しきって、三人で暮らす期間を設けられる。詳しく聞いて大丈夫そうだったら、おじさんとおばさんに頼んでみよう。
何にせよ、早く借金が返せそうな仕事の世話をしてくれるのはすごく助かる。昔のクラスメイトのよしみで紹介してくれるんだろうか、有り難い事だ。
「瑞希。別に元同級生って感じに喋ってくれて構わないから。俺も勝手に瑞希って呼ぶし」
後部座席での鈴木くんとの距離感に迷って、出来るだけ離れて座っていたら、気を使ってくれたらしく鈴木くんがそう言ってくれた。
「あ、ありがとう遼一?でいいかな?」
「そうそう、その調子。入学式からよく笑うやつなの知ってるしさ。人当たり良いのも知ってる。そのまんまで気ぃ使うなよ」
あっ、、俺の事そんな風に思ってくれてたんだ。俺も、鈴木くんが外面いいのは知ってるけど、それは言わなくていいよね。あっ、鈴木くんじゃなくて、遼一って呼べるように頭の中でもそう呼んでおこう
「一緒に住むんだしさ。堅苦しいの嫌いだから」
「えっ?」
俺の疑問の言葉と同時に車が停まったのは、高層といっておかしくないマンションの横だった。
「じゃぁ、こいつ連れて帰るから。俺今日はもう顔出さないから」
部下なのかな?それとも手下って呼ぶのかな?運転してくれてた人にそう告げて、遼一は俺の手をとってマンションに歩いていく。
手なんて繋がなくても、別に逃げやしないのに。
それにしても、、なんだか、高そうなマンションだな…。見上げると、高層マンションて高さを実感させられ、自分が今までと違う世界に飛び込むようだなと感じた。
エレベーターに乗り⑧を押す。遼一の部屋は8階なんだね。まさか一緒に暮らすとか思ってなかったから、エレベーターを降りて玄関の前まできたら急に緊張してきた。
仲良かった同級生と暮らすってのとは何か違う。でもスタンスとしては同級生って感じで気は使わなくていいって言ってたからなぁ。
「何してんの?入ったら?」
靴も脱がずに玄関先で突っ立ってたら声をかけられた。
「お邪魔します……」
「一緒に住むんだからお邪魔しますじゃないって。入るのに何か挨拶が必要だと思ったなら、そうだな、ただいまがいいんじゃないか?」
「そ、そっかぁ。じゃぁ、ただいま」
遼一がフッと笑った気がした。
「あーーー、今日も疲れた。瑞希、さっきの話の続きするな。そんなわけだから、瑞希が借金返済終わるまで逃げないように俺んちに一緒に住んでもらう。あとは、ご飯は瑞希が作って。たまに掃除も。俺、生活能力ないから」
そう、高級そうな車に乗り、高級そうなマンションにつき緊張していたが、部屋の中は散らかっていたのだった…。
遼一が豪快に倒れ込んだソファーなんかも、良さそうなものだろうに、食べ終わったお菓子の袋やら脱いだ靴下やらが乗っている。
一緒に住むならとりあえずゴミなんかは今まとめて袋に入れた方がいいな。
「遼一…ごみ…」
「それは後でいいからこっち」
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