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「ウィンディ、どうかしたのかね?」
何の前触れもなく背後から話し掛けられ、ウィンディは文字通り飛び上がった
「し、司祭様…威かさないでください…」
そこにいたのは平衡神神殿のゼニード司祭だった
普段と変わらぬ慈愛を湛えた笑顔
だが元冒険者で、斥候役の自分の背後を容易に取られるなど、考えられない
相手が自分自身よりも遥かに高ランクなのであれば、それは可能なのだろうが
そうだ、この司祭は人気が高く、普段から信者に取り囲まれている
なのに、どうして今日に限って自分と二人っきりなのか?
偶々なのか…意図的に人払いをしたのか…
そこに思い至った時、今日の自身の服装を改めて見直して、後悔した
アメリアやジュリアンに冷やかされ、ブレンとキリーが見惚れるほど、女の子らしく白のワンピース姿なのだ
勿論何時ものように帯剣していない
あとは…格闘術だけが頼り
そこまで考えた瞬間
不意に全身から力が抜ける感覚
魔術を使われた?いや、そんな素振りはなかった
「やっと効いてきたか」
その場に居ないはずの、もう一人の男の声がした
懺悔室から出てきたのは、確か、ビッター子爵と言ったか…
ギルドにもこの貴族絡みの苦情はいくつか届いていた、金払いが悪いとか…
そこでウィンディの意識は途切れた
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