最後のワガママ

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いつも僕にワガママばかり言っていた君だけど、それでも君は大切な人だから、君の顔が立体的に見られる間だけは、迷惑なくらい、君の近くにいることにした。 いつもたくさんの人に囲まれていた君は急に一人になって寂しいだろうから、もう飽きたって言われるくらい、凹凸のない君の笑顔に話しかけるよ。 だけどね。 君が旅立つ道しるべになる線香は絶対に1本もあげないし、焼香だってやらないし、南無阿弥陀仏で合掌して仏様に「連れて行ってあげてください」ってお願いするなんて、僕にはどうしてもできないや。 どうしても、したくないんだ。 そしたら本当にいなくなっちゃうんでしょ? 成仏しなきゃゆっくり休めないって言うけどさ、僕に取り憑いててくれたら、また、何でも言うこと聞くから。 何でもしてあげるから。 手違いでこの世にとどまったって、僕のとこにいれば、楽させてあげるから。 これ以上、遠くに行かないでよ。 最初で最後のワガママだから、今日くらい、僕のお願い、聞いてくれないかな。 …そんなに困った顔しなくてもいいじゃん。 冗談に決まってんじゃん、全部。 向こうでのんびり楽しんで。 お盆くらいは会いに来てくれたら嬉しいな。 そろそろ飽きたって顔してるね。 じゃあ最後にこれだけ聞いといてよ。 「ずっと好きだったよ。」
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