猫になりたい

1/4
前へ
/4ページ
次へ

猫になりたい

「うーん……」  深見信一はカーペットにうつ伏せになりながら唸った。視線の先には、同じように寝そべった一匹の猫がいる。猫はじっと見つめてくる信一を気にする様子もなく、時々毛繕いしながら大人しくしていた。  ここは、都内にある猫カフェ。1ドリンクから多くの猫と触れ合えるごく一般的な店なのだが、信一以外の客は遠巻きに居並ぶだけで、猫と遊んでいる様子はない。  それもそのはず、信一は店に入るや否や「ふれあい広場」と書かれたカーペット敷きの場所を陣取り、先述の通り、猫を眺めては唸っているのだ。  端から見たら完全に“あやしい奴”なのだが、信一本人は至って真面目だった。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加