二番目の仔豚の話

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二番目の仔豚の話

 二番目の仔豚は長男とは対照的に、平凡であることを厭わず普通の幸せを望む穏やかで控えめな性格の持ち主でした。 「お互いに金を目的として作った人脈は結局、金の切れ目が縁の切れ目になってしまう。兄さんはそれを理解していなかったから、あんな寂しい最期を迎えることになってしまったんだ。やはり必要なのは損得ではなく愛情で結ばれた絆だよ。そして上ばかり見ず、足もとの小さな幸せを大切にすることこそが本当の幸福に繋がるんだ」  二番目の仔豚は成長すると、学生時代からつきあっていた彼女と結婚し、子供を授かりました。  彼は兄豚とは違い、ワークライフバランスを大切にしました。子供が小さい時は育児休暇をとって育児の多くを担い、子供が小学校に上がると授業参観の日には必ず有給休暇をとって参加しました。子供の誕生日には、仕事が忙しい時でも残業を断って必ず早く帰宅するようにしました。  彼はそこそこ良い会社に勤めていたため兄豚ほどではないにせよそれなりの稼ぎがありましたが、その多くを家族、特に子供のために費やし、自身のためにはほとんど使いませんでした。それでも、彼には不満などありませんでした。  子供もすくすくと成長し、彼は幸せの絶頂にありました。  絶頂……つまり、一番上です。ここまで言えば、もうお分かりですよね。  そう、そこから先は、もう下っていくだけです。  悲しいことに、彼もまた兄豚と同じ病に冒されていることが判明したのです。  自分が余命幾ばくも無いと知った時、彼もまた目の前が真っ暗になりました。しかし彼は、自らの運命を受け入れられず悪足掻きを続けた兄豚とは違いました。  病気のことを家族に告げる時にはもう、彼は心の整理を済ませていました。  生命保険にも入っているし、自分の死後に家族が路頭に迷う心配は無い。  確かに短い一生ではあったけれど、自分は兄豚のように寂しい最期を迎えることなく、愛する家族に看取られて死ねるのだ。それだけで十分じゃないか。  小さな幸せを大切にする彼らしく、そう考えることにしたのです。  ところが、彼の病気が治る見込みの無いものだと知った彼の妻は、子供を連れてさっさと家を出て行ってしまいました。  そして数日後、彼の病室に愛する我が子からの手紙が届きました。 『いつも授業参観でダサい豚のお父さんを友達に見られるのが恥ずかしかったけど、今はイケてるお父さんが新しい家族になってくれたので幸せです』  そう書かれた手紙には、一枚の写真が同封されていました。  そして、そこには彼の家族……いや元家族の二人と共に、見覚えのある男の姿が写っていました。学生時代、彼のクラスでスクールカーストの頂点に立ち、いつも彼をいじめていた元同級生の牛雄です。  その写真を見た時、彼は気づきました。  そこに写る我が子が、牛雄と瓜二つだということに。そして、彼自身とは少しも似ていないということに。    彼は全てを悟りましたが、今となっては後の祭りでした。彼にはもう、元妻と牛雄に対して訴訟を起こすような気力も、体力も、そして時間も残されていなかったのです。  こうして二番目の豚は、自分はいったい何のために生きてきたのだろうと涙を流しながら、孤独と絶望の中で死にました。
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