4 大切なことは顔を見て

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 嬉しくて、声がした方向を見ると、そこには会いたかった彼女がいた。  赤い髪に深い緑の目の、可愛い彼女。お忍び用の質素な服を着ていても、なんとなくどこか気になる魅力を持っている。 「ニア」  駆け寄ってくる彼女に自然と笑顔が溢れて、つい会うなり抱きしめてしまう。  しまった、彼女の叔母上が最高にニヤニヤしている! 気をつけようと思っていたのに、さっそく燃料を投下してしまった。 「ルディ、会いたかった!」 「俺もだ、ニア。会いたかった……」 「急に会いに来てくれるなんて、そんなに私が恋しかったの?」 「当たり前だろう? 本当はニアと毎日、顔を合わせていたい」 「嬉しい……」  恥じらいながら微笑む彼女にくらくらしながら、俺は理性を奮い立たせる。 「あのね、私実はもう、荷物を宿においてきちゃったの」 「ん?」 「だから、いつでも駆け落ちできるわ。なんなら今からでも! どうする?」  な、なん……だと……。  頬を赤くしてこちらを見るあまりに可愛い彼女に、俺は赤くなったり青くなったりしながら、思考を平常に戻そうと必死になる。  叔母夫婦たちが、腕をバツマークの形にしながら、駆け落ちはダメだと主張している。分かってるから黙っててくれ! 「ニア。その、気持ちは嬉しいんだけど」 「……喜んでくれないの?」 「もちろん嬉しいよ! 嬉しいんだけど、実はその、俺は君に言っていないことがあって」  しろどもどろになる俺に、急に彼女も困ったような、戸惑ったような顔になる。 「あ……実は私も、あなたに言ってないことがあるの」 「うん?」 「ルディ。ルディは私のこと、見た目で好きになった訳じゃないのよね?」  不安そうに上目遣いで問う彼女は、最高に可愛い。しかし、それだけで彼女と一緒にいたい訳ではない! 「もちろんだ。君とはずっと、声だけでやりとりをしていたじゃないか。日々積み重ねた俺達の絆は、見た目によるものなんかじゃないよ」 「よかった。ルディ、大好きよ!」  そういうと、彼女はいつもつけていたネックレスを外す。  ――その瞬間、目の前に女神が現れた。
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