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嬉しくて、声がした方向を見ると、そこには会いたかった彼女がいた。
赤い髪に深い緑の目の、可愛い彼女。お忍び用の質素な服を着ていても、なんとなくどこか気になる魅力を持っている。
「ニア」
駆け寄ってくる彼女に自然と笑顔が溢れて、つい会うなり抱きしめてしまう。
しまった、彼女の叔母上が最高にニヤニヤしている! 気をつけようと思っていたのに、さっそく燃料を投下してしまった。
「ルディ、会いたかった!」
「俺もだ、ニア。会いたかった……」
「急に会いに来てくれるなんて、そんなに私が恋しかったの?」
「当たり前だろう? 本当はニアと毎日、顔を合わせていたい」
「嬉しい……」
恥じらいながら微笑む彼女にくらくらしながら、俺は理性を奮い立たせる。
「あのね、私実はもう、荷物を宿においてきちゃったの」
「ん?」
「だから、いつでも駆け落ちできるわ。なんなら今からでも! どうする?」
な、なん……だと……。
頬を赤くしてこちらを見るあまりに可愛い彼女に、俺は赤くなったり青くなったりしながら、思考を平常に戻そうと必死になる。
叔母夫婦たちが、腕をバツマークの形にしながら、駆け落ちはダメだと主張している。分かってるから黙っててくれ!
「ニア。その、気持ちは嬉しいんだけど」
「……喜んでくれないの?」
「もちろん嬉しいよ! 嬉しいんだけど、実はその、俺は君に言っていないことがあって」
しろどもどろになる俺に、急に彼女も困ったような、戸惑ったような顔になる。
「あ……実は私も、あなたに言ってないことがあるの」
「うん?」
「ルディ。ルディは私のこと、見た目で好きになった訳じゃないのよね?」
不安そうに上目遣いで問う彼女は、最高に可愛い。しかし、それだけで彼女と一緒にいたい訳ではない!
「もちろんだ。君とはずっと、声だけでやりとりをしていたじゃないか。日々積み重ねた俺達の絆は、見た目によるものなんかじゃないよ」
「よかった。ルディ、大好きよ!」
そういうと、彼女はいつもつけていたネックレスを外す。
――その瞬間、目の前に女神が現れた。
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