君の花に溺れる

2 茉莉花の午後

　老師があまりにも淡々と、冷静に告げるものだから、星黎は悲しくて悲しくてみるみるうちに涙が溢れてきた。止まらなくて、嗚咽も抑えきれなくなって、こらえきれず、泣いた。

　どうしても、老師は死ぬのだと思った。幼い星黎を置いて、いってしまう。悲しくて、涙が止まらない。

「いやだよぉ、せんせぇ。……ひっく、は……離れたくないよぅ。老師、死なないでぇ」

　老師の膝に突っ伏しておいおい泣いていたら、老師までおいおい泣き始めた。ぽたぽたと、星黎のうなじに老師の涙が落ちる。あたたかな涙が落ちる。
「うん、そうですねぇ。ずっと一緒がいいねぇ、ごめんね。星黎」

　その夜はふたりしておいおい泣き続けて、泣きつかれて眠ってしまった。

　翌朝、改めて話を聞いて老師の言う「もうすぐ」が300年以上あとのことだと知ったとき、星黎は腰が抜けてその場に座り込んでしまった。安心するやらちゃんと教えてくれなかった老師に腹を立てるやらで、喜べばいいのか泣けばいいのかわからなくて情緒が大変だった。