2 茉莉花の午後

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 美花族は、戦闘能力が伸び悩むからといって、決して他種族に劣る存在ではない。  彼らの最大の美点は、飛び抜けた見た目の麗しさと若さが授けられている点だろう。長い生を謳歌する間、どれだけの時間が経とうとも若々しく見目麗しい見た目のままで、変わらず、老いることがない。  最も美しい姿にまで成長したら、もうそれ以上老化することがなく、けれども不可変ではなく、成長後にも本人が望めば自然と容姿や身体に変化が起こるそうである。つまり見た目を自分の思うままに変化させることもできるということだ。  わがことながら、不思議な体質だと星黎は思う。  それから「花紋」も、美花族固有の特徴だといえよう。  その名の通り花の模様のことで、美花族は皆それぞれ、生まれつき身体のどこかに花紋が浮かんでいる。星黎は白百合で、老師は赤薔薇といった具合だ。残念ながら、星黎はそれ以外の美花族に会ったことがないので、他にどんな花紋があるのかは知らない。  この「花紋」の有無で美花族かそれ以外の種族かを見分けることができるらしいのだが、衣服に隠れていることも多いので、同族と出会うことは滅多にないのだと、老師が言っていた。   これらの知識は、すべては老師が教えてくれたことだ。棒術も体術も、そして日常生活を営む上で必要な知識も、世界のなりたちや自分たち美花族のことも、星黎に教えてくれたのは老師そのひとだった。  星黎にとって老師は憧れのひとだ。  星黎が聞くことはなんでも答えてくれる。  どんなことも知っているし、なんだってできる、すごいひとなのだ。
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