2 茉莉花の午後

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  この山の奥に「咲いていた」星黎を拾い、育ててくれたのもこの老師である。  「性別」という概念は美花族にはないけれど、「父」という概念に近しいものを感じる。  美花族には性別がない。どちらの性も持っているという方が良いかもしれない。  成長するにつれて、自分の好みに近い容姿や身体へと、自然に変わっていくものなのだ。成長しきっても姿形を変えることができる体質は、もしかすると性別を超越した種ゆえの特徴なのかもしれない。  星黎は物心ついたときから女性型でいる。自分の長くて艶やかな髪の毛を気に入っているから、男性型へ変わりたいと思ったことはない。老師が撫でてくれるときに、綺麗ですねと褒めてくれるのが誇らしいから、たぶん今後も姿を変えようとは思わないだろう。  老師は男性型だ。星黎が知る限りでは、男性型の姿しか見たことがない。昔から男性型でいるのかどうかは、知らない。聞いたことがないからだ。けれども老師は今とても麗しい姿をしているので、わざわざ変える必要はないと思う。  
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