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数日後。
部活をやっている友月を確認してから、私は、あの病院に向かった。
上手いことナースステーションを通り抜け、天夜透子の病室にたどり着いた。
ノックをして病室に入る。
病室には天夜透子がベッドに横たわっていた。呼吸器をつけているわけでもなく、包帯が腕に巻かれている以外は寝ているようだった。
ベッドのそばには祐子が一人で座っており、うたた寝をしているようだった。
私は、そっと自分の身体に近づいて手を取った。
「……どうしたらいい?どうしたら戻れるの?早くしないと自分の体に戻れなくなっちゃうかも。友里花ちゃん、お願い。この体の中にいるの?出てきて!」
横たわる透子の身体をさする。
「何をする気だ!」
突然の手を掴まれる。いつから病室にいたのかそこには怖い顔をした夫の姿があった。
ハッとしてまずは祐子を見た。祐子は疲れが溜まっていたのかピクリとも動かない。眠っている。
私は、友祐さんを見つめて
「しぃ!静かにして。」と祐子を指差し、友祐さんに囁いた。
「ちょうどよかった。あなたとも話したいと思ってたの。ちょっと来て。」
私は、部屋の外の廊下に友祐さんを有無を言わさず誘導して小声で話す。
「あのね、話は友里花ちゃん、いえ、私の母から聞きました。でも私は、貴方がそんな人じゃないって信じてる。あの人と付き合ってたなんて嘘よね?それとも友里花はあの人の言ってる通り貴方の娘なの?」
「ばかな!そんなわけない。」
「じゃあ、何であの人にちゃんと言わないの?このままじゃあの人どんな言いがかりをつけてくるかわからないわよ。最悪貴方と私なら対処できるわ。でももし子供達に害が及んだらどうするの?早く手を打たなきゃ。」
「……何を言ってるんだ?君、自分の立場をわかっているのか?君はあの女の娘だろう。」
「どう思われても仕方ないし、信じてくれないのはわかってる。だけど、私は、皆を助けたい。だから、ちゃんと話を聞かせて。あの人と性行為をしたことがあるの?」
娘より若い女子高生の口から男女関係の有無をズバリ聞かれて、もともと女性の扱いが上手い訳では無い友祐さんは唖然として口籠る。
「な、何を………」
「誤魔化さないで。18年前、あの人と関係を持った?持たない?どっち?」
「……持ってない!……と思う。」
「思うって何よ!ハッキリしなさいよ!シたの?シてないの?」
「ちょっ!いや、その……。あの頃ものすごく忙しくて。その中で飲み会でうっかり飲みすぎてしまって………。気づいたら、その…連れ込まれてたんだ。ほ、ホテルに。でも!全然覚えもなくて!ちゃんと服も着ていたし!た、ただ、彼女、君のお母さんは隣で全裸になってて……。」
「ヤッた、って言われたわけ?」
「いや、その、大人同士の話だから割り切りましょう、って。お金を……」
「払ったの?」
「財布に入ってた分だけだよ!現金そんなに持ってなかったし!」
「その後は?二人で会ったりしたの?付き合ったの?」
「まさか!ややこしいことになったら困るから弁護士を差し向けようとしたら姿を消したんだ。あとから社内で聞いてみたら何人かそんな風に嵌められた社員がいたみたい……。あ、すまない。こんな言い方をして。仮にも君のお母さんだね。」
友祐さんは申し訳無さそうに謝る。人が良いんだから。そんなのだから友里花ちゃんの母親みたいなのにハメられるのよ。
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